自宅で「こども診療所」を開業して9年目になりました。その前は「障害」児施設勤務の傍ら、保育者や親たちと共同保育所を運営していました。この場所に引っ越して開業するまでの10数年間は、週末に自宅を開放して絵本の貸し出し、夏にはキャンプに行くなどの活動をしていました。
私には3人の子供がいます。一番目の子が「障害」を持っていたので、この子を社会の中に押し出していくには、どうしたらよいか悩んだ後の選択でした。おかげで、近所に住んでいる大勢の子供やその親たち出会い、面白いことも苦しいことも、いっぱい味わってきました。
現在は小児科医として、もっと広い地域の人たちと付き合っています。赤ちゃんのしゃっくりが止まらないと言って、連れて来る母親。急に熱が出たと夜中にかかってくる電話。生活習慣や言葉の壁を感じながら日本に住み、子育てをする外国人も増えてきました。国籍を問わず、初めての子を産んだ母親が子育ての不安を持つのは、当たり前だと思ってしまいます。小児科医として数年の経験を積んでいた私も全く同じだったのですから。
この不安を和らげるには、顔を合わせて子供のことをあれこれ話し合い、ともに育てていく相手が必要です。父親が一緒に育児を担う社会であれば、不安が半減するのは確実ですが、忙しくて時間が取れないという声が聞こえてきそうです。差し当たって身近にだれもいないと、小児科医を訪ねることになります。小児科医は、病気かどうかを診断し、治療するのが仕事とわきまえているので、子育ての幅広い悩みを聞いてくれる相手としては適任とはいえません。
最近ではインターネットで子育ての広場が設けられていて、互いにメールのやりとりをしています。保育園では子育て支援事業として、子供を預けていない人からも育児相談を受け付け、園庭を開放して近所の子が遊びにこれるようにする所が増えています。児童館の育児サークルに参加する親子もいます。
母親同士が集まって気楽に話し合ったり、住んでいる街の育児情報をまとめて、パンフレットを出したりする動きが各地であります。また、保育者と一緒に共同保育を続けているグループもあります。自宅に閉じこもらないで、自分の流儀で子育ての輪を広げていってください。
次回からは、子供がかかりやすい病気や症状について、具体的に説明していきます。